動物でも植物でもない、微生物や菌類とも違う、もっと命の原生体に近いモ ノ達、それらを総じて"蟲"と呼ぶ。それらは形や存在が曖昧で、存在を知る ものは限られた"ヒ ト"のみである。"ヒト"と"蟲"が重なる時、人智を超えた妖しき現象が生まれ、その時 "ヒト"は初めて"蟲"の存在を知ることになる。
本編では"蟲"と"ヒト"をつなぐ"蟲師"である主人公のギンコが、旅の途中で 様々な人々と、それに関わる"蟲"に出会い、妖しき現象を解決し、"ヒト"と "蟲"とを共生へ と導いていく…。
1話「緑の座」(みどりのざ)
人里離れた山奥に住む、神の筆で描いたものすべてを具象化させてしまう能力を備えた少年の元に、蟲師・ギンコが訪れる。少年の家で出会った少女はいったい何者なのか。
2話「瞼の光」(まぶたのひかり)
瞼を閉じた時に見える、闇の中の光。そして、ふたつめの瞼を閉じた時、上の方から 本当の闇が降りてくる。ふたつめの瞼に棲む蟲が光を奪うと、そこにあるのは本当の闇と光の河。
第3話[柔らかい角](やわらかいつの)
村民達が次々と失聴する、雪深き静かな山村。その静寂には、音を喰い尽くす蟲が関係していた……。
第4話[枕小路](まくらのこうじ)
予知夢を見させる蟲にとりつかれた男。人生さえも翻弄されて疲れ果てた男に、さらに数奇な運命が待っていた。
第5話[旅をする沼](たびをするぬま)
山中を移動する「生き沼」と共に生きることを望んだ少女。
ヒトではいられなくなると悟りつつ、少女は身を委ねた。
第6話[露を吸う群](つゆをすうむれ)
潮に阻まれた孤島で、死と再生を繰り返す少女。"生き神"として崇められる少女が見ていたものは……。
第7話「雨がくる虹が立つ」(あめがくるにじがたつ)
雨後の空にかかる、妖しくも美しい光の束。それを追い続けることを己の人生とした、数奇な男がいた。
第8話「海境より」(うなさかより)
海原で妖しきモノに妻を隠された男。
断ち切れぬ想いから、男は浜で妻を待ち続ける。二年半の歳月を経てなお、再会を信じて−−−。
第9話「重い実」(おもいみ)
天災のたび豊作となる村では、収穫の後に村民がひとり命を落とす。
先祖の呪いと恐れられる現象には、かの地の祭主が封じた過去があった。
第10話「硯に棲む白」(すずりにすむしろ)
磨った者が次々と奇病に冒される不吉な硯。蟲の化石から作られたという硯の謎を解くべく職工を訪ねたギンコは、さらに数奇な背景を知る。
第11話「やまねむる」
霊峰の山腹に開いた穴−−−。その奇妙な現象に足を山中へと踏み入れたギンコは、老いた蟲師と出会う。
第12話「眇の魚」(すがめのうお)
沼のほとりに棲む隻眼の女と偶然に出会った少年。いつしか女を慕うようになった少年は、沼の魚もまた隻眼であることに気づく。この沼には何がーーー。
第13話「一夜橋」(ひとよばし)
その深き谷へ落ちた者は、ヒトとは呼べぬモノとなり戻ってくるという。"谷戻り"と呼ばれる伝承には、生物の体に宿る"蟲"が影響していた。
第14話「籠のなか」(かごのなか)
己の意志で歩みつつも、何故か同じ道へと戻ってしまう男。
その不可思議な現象の陰には、男の妻−−−ヒトではないモノの姿が在った。
|